SEM重要ニュースどれだけ覚えてる?2008年上半期総決算!

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2008年08月27日 

2008年も話題には事欠かないSEM業界。ニュースが多すぎて把握しきれていない方もいるのではないでしょうか?今回のコラムでは「2008年上半期SEMニュース総決算」と称し、2008年1~6月にかけて話題となったニュースについて、いくつかの重要なニュースを、SEM総合研究所 所長 渡辺隆広が語ります。

リスティング広告入札管理ツール元年

2008年になって、次のような米国でリスティング広告の入札管理ツールを提供している企業が日本に参入してきており、広告主側でもツールに対する関心が高まっています。そのような意味で、今年はリスティング広告入札管理ツール元年と言えるでしょう。欧州を中心に展開しているトレードダブラーの子会社で、TDテクノロジー社が提供する「tdサーチウェア」、Web解析ツール「SiteCatalyst」で世界的にシェアを持つOmniture社の提供する「SerchCenter」、イスラエルのKenshoo社が提供する業界で唯一の第三世代と言われている「KENSHOO SEARCH」、その他米国企業のSearchIgnite、SearchForce、Efficient Frontierなど数多くの入札管理ツールが存在しています。米国では、2000年頃からキーワード単位の入札ツールが存在し広く使用されていますが、日本では、まだこのようなツールは十分に浸透しているとは言い難い状況です。このような入札管理ツールを導入すれば全てが解決すると思いがちですが、ツールはあくまで手段に過ぎず、どのような戦略を立て、どのような運用ルールを作るのかは、人の頭で考える必要があります。従って、より効果的にツールを活用し、成果を向上させるためには、SEMの専門ノウハウを有する広告代理店やコンサルタントの活用がキーとなるでしょう。

2008年1月 Google、docomoとモバイル検索分野で提携。その影響と今後の予想

2008年1月のGoogleとdocomoの提携により、2008年4月からiMenuのTOPにGoogleの検索窓が設置され、直接サイトを検索することが可能になりました。これによりGoogleを経由したサイトへの訪問者数は確実に増加し、モバイル検索市場においてGoogleのシェアが約80%を占めることとなりました。更にGoogleアドワーズ広告のシェアも、検索市場同様80%近くとなりました。PCとは異なり、モバイルの世界ではGoogleが圧倒しているでしょう。さらに、現在の日本の10~20代の若年層ユーザはPCよりも携帯電話で初めてインターネットに触れる人が多い状況です。その為、携帯電話でGoogleに慣れ親しんだ後にPCを利用するユーザは、今後より増加すると考えられます。それに伴い、PCにおける検索市場シェアにも影響を与える可能性も十分にあり、今回の提携は副次的効果も大きいと考えられます。

アジアの大手検索エンジン「百度」日本に本格参入

2008年1月23日より日本での正式サービスを開始した中国の検索エンジン「百度」。リリース当初は各メディアに取り上げられていましたが、日本の検索エンジンシェアへのインパクトはそれほど大きいものではありませんでした。「Nielsen Online」の2008年4月の調査を見ても、日本における「百度」の検索シェアは1~2%程度となっています。「百度」は確かに中国最大手の検索エンジンであり、一定レベルの検索技術やノウハウを持ってはいますが日本ではYahoo!が圧倒的に強く、「百度」が日本の市場で存在位置を示すには、かなりのリソースを投じる必要があるでしょう。ただし、「百度」に限らず、米国にも日本市場を狙っている小規模のベンチャー企業が数多く存在しています。最近では英語圏だけをターゲットとせず、グローバルに対応できるようなテクノロジー開発をしているので、無名の企業が開発したユニークな機能を搭載した検索エンジンが、今後日本に参入する可能性もあると考えられます。

Google、ユニバーサル検索を拡大

米国ではすでに2007年5月より導入されているユニバーサル検索。日本でも2008年5月から徐々に導入され始め、Web検索結果上に動画・画像・ブログ・地図・口コミレビューへのリンクなど、様々なタイプのコンテンツが同時に表示されるようになっています。例えば「表参道 レストラン」で検索すると、Googleの検索結果画面に表参道駅付近の地図とレストランの情報が検索結果として表示されます。ユニバーサル検索はユーザに対してGoogleが提供している動画・画像・ブログ・地図・口コミレビューなどのサービスの認知をさせるという狙いもあり、順調にサービス拡大をしています。具体的な調査が行われている米国においては、このユニバーサル検索の登場によって、検索市場に主に以下3つの影響が表れています。

  1. ユニバーサル検索対応の検索結果画面のクリック数が低下している
  2. ユニバーサル検索結果画面におけるニュースコンテンツのクリック率が高まっている
  3. 地図が表示された場合、検索結果における全体のクリック率が下がっている

ユニバーサル検索の拡大によって今後の検索結果においてクリック率が変化してくると予想されるため、通常表示される広告や自然検索に併せて、検索エンジンが提供しているサービスを有効に活用し、より検索結果に自社サイトが表示されるようにしておく必要があるでしょう。

対Googleの新戦略、米Yahoo!のオープン戦略「SearchMonkey」「BOSS」の狙いは?

現在の米国の検索エンジンシェアは、Googleが約60%、Yahoo!が約20%となっています。世界的にみてもGoogleは圧倒的なシェアを占めており、Yahoo!は苦戦を強いられている状況です。Yahoo!は、生き残りをかけて検索広告からの収益を拡大するために、「Yahoo!オープン戦略(Yahoo! Open Strategy)」掲げました。具体的には、2008年4月に「SearchMonkey」が、2008年7月に「BOSS(Build your Own Search Service)」が発表されています。「SearchMonkey」とはGoogleのユニバーサル検索のように、検索結果画面に写真・電話番号・住所・レビューといった関連するコンテンツを表示できるもので、関連するコンテンツは、サイト運営者自身でカスタマイズが可能です。ただ、ユーザがアプリを事前に登録する必要があるほか、サイト運営者もコンテンツのマイクロフォーマットやRDFなどの形式で構造化する必要があります。

「BOSS」とは、Yahoo!の検索技術を誰でも自由に使えるようにするサービスです。今までの「Yahoo! Search API」のように制約なく、オープンに公開されており、「Hakia」というソーシャル検索はこれをベースに作られています。また、この「BOSS」は、膨大な予算が必要とされた検索エンジン市場において、ユニークなアイデアはあるが資金がない企業に対しても、検索技術を利用する機会を与えることになります。そしてこのYahoo!のプラットフォームを使ってもらうことで広告収入を増やすことができる、というところにYahoo!の狙いがあるといえます。しかし、Yahoo!・Google・Microsoft・Ask.com・AOLを除いた検索エンジンのシェアがわずか数%しかないため、「BOSS」というサービスを出したとしても数%のシェアがYahoo!に置き換わるに過ぎず、シェアの大勢に影響は出ないと考えられます。検索エンジンに本格的に参入する企業は、自社内で検索エンジンを作るはずですので、これらの戦略がどこまで有効なのかは不透明です。

2008年6月 米国にてYahoo!、Google広告の提携開始

2008年6月、米国のYahoo!とGoogleが検索広告分野での事業提携を発表しました。この提携によってYahoo!が「AdSense for Search」と「AdSense for Content」という2つのサービスを導入することになり、Yahoo!の検索結果やサイト上に、Googleアドワーズ広告が掲載されることになりました。Googleとの提携は独占的契約ではないとはいえ、独占禁止法に抵触する可能性もあり、米国で公聴会が開かれ、Yahoo!・Google・Microsoftの3社間で激しい論戦が行われています。Yahoo!側は特定のキーワードや広告について選択的にGoogleの広告を掲載するとしており、Google以外のサードパーティが広告掲載を希望するのであれば許可するというオープンな姿勢を強調しています。しかし、Googleの広告を掲載したほうがお金になるのであればGoogleアドワーズ広告を選択するはずなので、独占に当たるとも考えられます。この問題を米国の司法省がどう判断するかは現時点では不明です。

ちなみに日本市場においては、Yahoo!が日本の検索エンジンの約50%のシェアを占めていることもあり、Googleを部分的に導入するということはありえないでしょう。

アルゴリズム検索 vs ソーシャル検索の時代へ

現在、検索市場において大きなシェアを誇るGoogle・Yahoo!・Live Searchは、それぞれ独自のアルゴリズムによって機械的にページの重要性を判断し、検索結果の順位付けを行っています。これに対抗する勢力とされるのが「ソーシャル型・編集型検索エンジン」です。アルゴリズムは人の意見や評価を一切考慮しないのに対し、ソーシャル型・編集型検索エンジンは人間の考える価値・意見・評価を反映します。代表的なものとして、Wikipediaの創設者が開発した「WikiaSearch」や「Mahalo」が挙げられます。アルゴリズム検索技術の長所はリンクを“支持”とみなし、より支持の多いページを評価する点にありますが、近年はスパムリンクの横行、RSSやブログ、SNSなどウェブ環境の変化によりリンクのみで高い関連性を判断することが十分ではない場合があること、さらにリンクの発信はサイト運営者の意見であり、検索ユーザの意見ではないといった意見もあります。

対するソーシャル検索は、検索ユーザの意見が反映されること、人の目で見た良い・悪いの大多数の意見を参照できることなどの利点が指摘されます。ただし検索結果の良し悪しは主観的なものであり、検索するキーワードによっては自分の望んでいないサイトばかりが上位に表示されるという問題が起きるかもしれません。また、人力には収集・評価できるページに限界があります。その為、ソーシャル検索の要素は人の価値判断を採り入れる試みとして注目には値しますが、検索結果の品質向上に役立つかと問われると限定的かもしれません。

ただし、アルゴリズム型検索エンジンしかない状況における、新しいランキングルールとしては画期的といえるでしょう。

MicrosoftがPowerset社を買収、その狙いは?

Powerset社というのは、1~2年前から米国で注目されていた新興企業ですが、この企業が注目されていた理由は、「Powerset NATURAL LANGUAGE SEARCH(※以後、単にPowersetと表記)」という自然言語処理を使ったセマンティック検索を開発していた点にあります。

一般に検索エンジンは入力したキーワード・単語に対して、そのキーワードを含むWebページを表示するだけです。例えば東京タワーの高さを調べたいとき、「東京タワー 高さ」というように入力して表示される検索結果画面のリンクをクリックし、そのサイトの文章を読んで「333m」という「答え」を見つけます。一方、Powersetでは「東京タワー 高さ」と入力すると、検索結果画面に「東京タワーの高さは333m」というように答えが記載されている部分を表示します。

このように、検索キーワードの意味まで理解して情報を検索する自然文ネット検索サービスを提供し、狭義のキーワード文字列マッチングに依存するサービスを一気に追い抜くことを目指しています。

Powersetは2008年に一般公開されましたが、検索対象とするのは「Wikipedia」のみという問題があります。「Wikipedia」内において自然文検索による答えを出すのであれば、範囲が狭いのでそれほど高い技術とはいえないでしょう。Powersetは文章の意味を理解しようとする検索エンジンであるため、「Wikipedia」程には文章が論理付けされていない他のWebページに適用しようとすると、サイト別に文意を理解するロジックを用意しなければならなくなるという技術的な問題もあります。さらに、Webサイトの検索対象を拡大しようとすると、その対象を順位付けるランキングアルゴリズムが必要となります。

こうした問題を解決するには膨大なリソースと資金が必要となります。そこでタイムリーに話を持ちかけたのがMicrosoftだったのです。Microsoftはアンサーエンジンを目指している為、Powersetのように文脈を理解して答えを表示する検索エンジンは、その考えと合致していることになります。技術的にどこまで解決されるのかは不明ですが、Powersetの検索対象が増加し、ランキングアルゴリズムが確立すれば、新しい検索エンジンとして市場に影響を与えると予想されます。

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どれだけ覚えていたでしょうか?変化の激しい検索・SEM業界ですが、重要なニュースから今後の動向を注視し的確に対応していきましょう。

株式会社アイレップ SEM総合研究所所長渡辺隆広
ライター=株式会社アイレップ 千葉哲

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