【検索エンジン特集】 第1回:韓国最大手・NAVER(ネイバー)日本上陸、その検索サービスの特色は?

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2009年07月17日 

聞き手:鈴木綾香(アイレップ 広報)

話し手:渡辺隆広(アイレップ SEM総合研究所 所長)

2009年7月1日、韓国最大手の検索エンジン・NAVER(ネイバー)が日本語検索サービス(ベータ版)の一般公開を行いました。韓国検索市場に経営資源を集中させるという経営判断から一度は日本から撤退したネイバー。再上陸にあたって日本の検索市場を攻略するために周到な準備を重ねていたようです。今回はこのネイバーに焦点をあて、その検索サービスの特徴や生まれた背景、そして今後の行方について解説していきます。

韓国でのネイバーはどのくらいの利用者がいるのでしょうか?

韓国NHN社が運営するネイバーは、韓国国内で最大手の検索サービスです。米調査会社・comScoreが発表したデータによると、2009年4月の韓国の検索エンジンシェアは、NHN (ネイバー)が61.9%。2位のDaumが19.7%、3位がGoogle 7.3%、4位がYahoo! 4.1%とマーケットの過半数を占めています。

「再上陸」ということで、もともと日本でもサービスを提供していた?

2001年4月にネイバーは日本語検索サービスを提供していました。当時はWebや画像、動画、掲示板、音声などを1つの検索結果画面に統合して表示する総合検索サービスを行っていました。統合検索というと最近ならGoogleやYahoo!、Bingが行っていますが、ネイバーは8年も前から同等のことを行っていたわけです。しかし、韓国NHN社が経営資源を韓国検索市場に集中させるために、2005年8月に一度は撤退を決めたということです。ただ、「一時撤退」ということで、日本市場に再度チャレンジする意思は持っていたようで、それが数年の月日を経てようやく実現したということです。

今更GoogleやYahoo!と同等の検索サービスを提供しても、誰からも利用してもらえないのでは?何か特徴が出ているのですか?

Ask.jpやMARSFLAG、mooterなど、かつて日本の検索市場にチャレンジしてきたプレーヤーと、彼らが伸び悩んだ要因は十分に研究してきたのでしょう。今回のネイバーは、ユニークな価値を提供するためのサービスコンセプトを固め、それを実現するための検索機能を実装してきています。

「探しあう検索」と表現していますが、簡単にいうとネイバーは『検索とコミュニティを融合した検索サービス』です。

Yahoo!とmixiを融合したようなもの?

例えるならmixiというよりも、「OKWave」「Yahoo!知恵袋」「はてな検索」のようなQ&Aサービス(ナレッジコミュニティ)と「Wiki」に、検索エンジンを追加したようなイメージでしょうか。つまり、従来の検索エンジンは、私たちが質問(=検索クエリ)を投げると、検索エンジンが答え(=検索結果、リンク)を返してくれました。また、検索エンジンは基本的に質問に対して1つの答えを返そうとしますから、私たちが投げる質問があいまい(=キーワードが適切ではない)と、答えもあいまい(=検索結果が不適当、期待したものではない)になってしまいます。

対してネイバーは、質問を投げると、検索エンジンだけでなく、ネイバー上の他のユーザが回答してくれます。あるいは、他のユーザがあらかじめ整理整頓してくれた情報を見つけられるようになっています。

例えば「花火」と検索すると、GoogleやYahoo!は検索クエリ「花火」に合致するWebページを表示するだけです。しかしネイバーは、もちろん合致するWebページも表示しますが、同時にユーザが作成した(まとめページと呼びます)「今年行きたい花火大会」「花火大会で見かけた浴衣美人ショット」「大会の穴場を紹介しているページ」など、従来の検索エンジンでは出会う機会のなかった情報と触れる機会が生まれます。

NAVER トップページ

それは検索キーワードを工夫すればGoogleやYahoo!でも実現できるのでは?

それはある意味正しいです。ただし、インターネットユーザのみんなが全ての検索機会で1度で最適な検索キーワードを探し出して検索をしているわけではありません。現実には、何度もキーワードを入力しなおしたり、検索結果とWebページを行ったりきたり、あるいは、探し求めている情報へ辿り着くためのキーワードがわからずに検索を放棄していることも数多くあるのです。

また、現在の検索エンジンが表示する検索結果に対する満足度は、その検索クエリに依存してしまいます。例えば私が月周回衛星「かぐや」に関するピタリな検索結果を得るためには「衛星かぐや」と入力してあげなければ適切な検索結果にはならないのです。Yahoo! JAPANで「かぐや」と検索すると、衛星ではない文字列一致した「かぐや」も含まれてしまいます(2009年7月17日時点)。これをネイバージャパンは「キーワード入力依存」として課題の1つとして掲げていますが、キーワードを正しく入力しない限り正しい検索結果が得られないというのは当たり前といえば当たり前なのですが、それは改善する余地があるはずです。それを改善して検索体験のレベルを変えようというのがネイバーの考えでもあるのでしょう。

キーワードがちょっと違っていても答えが得られるのがネイバー?

ネイバー自身は「感性的体験」と表現していますが、要は無機質な検索サービスに楽しさや多様性、つながりを与えて、「お、これは」という情報と出会える機会を増やそうとしているわけです。

この後に説明する「まとめページ」がネイバー検索の肝にもなると思うのですが、ユーザ視点・ユーザが欲しい単位で整理・編集された、集合知を生かしたページを検索できるようになっています。

例えば「iPhone」と検索すると、iPhoneで使えるアプリや対応アクセサリーを1ページでまとめた「まとめページ」が見つけ出せます。「浮気」と検索すると「浮気をしそうな芸能人といえば?」「今週、妻が浮気します感想ブログ集」などが探せます。これらはCGMのどこかにきっと存在するでしょうが、情報過多により埋もれています。現在でこそBuzzurlやはてなブックマークなどによって発掘されるものもありますが、それはごく一部。ちょっとあいまいなキーワードでも、こうした人の編集の努力によって生まれたページ、しかも「検索結果に出てきたら、ちょっと興味もちそう」な情報と出会えるようになっています。

NAVER 検索結果

では「まとめページ」に話を移しましょう。まとめページとは?

あるお題(テーマ)に沿ってユーザがページを作成できる機能です。先ほどのiPhoneを例にとると、すでに「iPhoneで使えるアプリ」、「iPhoneケースのおすすめ」のように、ある話題にそってオンライン上のWebページを整理したページが作成できます。Webページだけでなく、「新垣結衣」と検索した時に新垣結衣のヘアスタイル写真集が出るように画像(写真)や動画のまとめページも作成できます。さらに「フリートーク」といって、意見交換(掲示板)みたいなページも作成できます。

NAVER まとめ

編集するのは面倒ではないのですか?

まとめページを作成するにあたって特殊な文法やタグを覚える必要はありません。追加したいコンテンツをクリックして、テキストで入力していくだけと敷居を低くしています。

まとめページは誰でも編集可能?

はい、例えば私がある話題のまとめページを作ったとします。他のユーザの中には私よりもその話題について詳しい人がいて、もっと参考になるページや画像を知っていることもあるでしょう。そのときは簡単に私のまとめに新しい情報を編集・追加することができます。

また、編集までかかわりたくなくても、それが役に立ったと思ったらGoodボタンを押して評価してあげることもできます。先述したようにネイバーはコミュニティ要素も持っていますから、編集という敷居が高いアクションをしなくても、1クリックでのレビューなど、ゆるやかにコミュニティにかかわるような仕掛けも施されています。

まとめページがあると検索サービスはどう変わるのでしょうか?

「形式知だけでなく暗黙知も探せる」「提案や気づき、きっかけが得られる」といったところがメリットでしょうか。実はマイクロソフトもMSN相談箱(OKWaveベースのQ&Aサービス)を検索に融合して同じことを実現しようとしているのですが、現在の検索エンジンというのはWebページを対象に検索するので、すでに存在する情報、事実については検索できます。しかし、文章化されていないものは検索できないのです。

検索エンジンが私たちの日常生活に浸透し、多くの人が様々な場面で検索エンジンを利用するようになりましたが、検索タスク(目的)によっては検索エンジンは適切に応えてくれるわけではありません。例えば来月彼女の誕生日なんだけど何をプレゼントしたらいいだろう?という悩みには応えてくれないわけです。コミュニティ機能を搭載することで、ずばり回答はなくても他ユーザの提案やアイデアと触れることができます。

また、iPhoneにインストール可能なアプリは簡単に探せても、自分が入れるべきおすすめアプリは簡単に探せません。Googleで「iPhone おすすめ アプリ」と検索すれば出てくるには出てきますが情報は散在しています。それならネイバー上で1ページでまとめられたページの方がわかりやすいですよね。

検索エンジンは便利になったとはいえ、まだまだ人の編集能力が優れている場面が数多くあります。検索タスクによっては人の編集コンテンツの方が圧倒的に有益である場合も多いでしょう。だからSearch Wikiaやmahaloは編集型検索を市場に投入してきたのですが、残念ながら編集だけではWeb検索(マシンアプローチ)が実現する情報量には到底適いません。だからネイバーはマシンアプローチの良さ(アルゴリズムベースのWeb検索)に編集型機能、そこから生まれる集合知という情報を付加して検索サービスの価値を創り出そうと試みているのです。

なるほど。ネイバーは「国内で意味のある3位」を狙っているそうですが、どこまでいけるでしょうか?

今でこそGoogleはグローバルで60%強、日本市場で30%前後の検索シェアを持っていますが、数ヶ月や1年という短い期間で今の地位に至ったわけではありません。長い長い月日を費やしているのです。ネイバーも簡単に今のYahoo!&Googleの2強に食い込めるとは思っていないでしょうから、これからサービス品質を高め、独自の価値の創出とそれをマーケットに伝える努力をしていくのでしょう。

10年前なら単純に検索技術の優劣でユーザを獲得することができたでしょうが、それなりにYahoo!やGoogleに満足しているユーザが多数いる状況においては、検索会社もマーケティング活動を行っていくことが必要。それはさておき、まず日本語処理の改良が必要。意図的なのかどうかわかりませんが、「FX」と検索した時に、dynabook QosmioやカローラFXまでまとめ検索結果に出てきてしまいます。Web検索も結果画面に画像をサムネイル表示しますが全然関係ないものが出てきますし検索結果によっては多すぎて(しかし検索において役立つわけでもなく)単にうっとうしいという印象もあります。

また、まとめページが競争優位性の1つになりえますが、『役立つ』ものが増えないと、つまりゴミが増えてくると意味をなくします。現在はネイバー社内でも作成しているようですが、価値あるまとめページを創り出していくこと、並行して、このまとめページに参加するためのインセンティブ、作成することの楽しさや価値を創り出すための工夫をすること、そしてユーザ数が増えてきたら問題となるであろうスパムをどのように排除していくかというのも課題でしょう。

そしてこれが1番の問題ですが、最初のネイバーとの接点をどう作っていくのか。ネイバーがリリースされた後に、検索業界以外の方から「ネイバー、なにそれ?」「マニアックですね」という声をよく聞いたのですが、このように一般の人はネイバーの存在すら知らなければ、知ったとしてもそこにアクセスして検索サービスに触れようとする人もいないでしょう。知ってもらわなければ、そして使ってもらわなければどうしようもありません。Yahoo!やマイクロソフトは新機能を自社のポータルにのっけておけばとりあえず使ってもらえますがネイバーはそうはいきません。他のサイトと連携してネイバーのプロモーションを手伝ってもらうなどの案もあるようですが、まずはユーザに触れてもらう機会をたくさん作る、そこからでしょうか。

次回は第2回「意思決定を支援するマイクロソフトBing」です。

株式会社アイレップ 取締役 SEM総合研究所 所長 渡辺隆広

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