2011年 サーチマーケティング展望 [1] Yahoo! JAPAN 検索サービスとの向き合い方

はてなブックマークに追加する

2011年01月28日 

2011年という新年を迎えたということで、今回は検索エンジンマーケティング(SEM)展望について語ろう。第1回は、SEM 業界はもちろん、SEM に取り組んでいる企業担当者も気になるであろう、Google の検索システムを採用したYahoo! JAPAN に話をフォーカスしたい。

2010年7月末の段階で、アルゴリズムサイト検索技術と、検索広告配信システムにおいて Google の技術を採用すると発表された。本稿執筆時点(2011年1月7日)において、ヤフー社は後者の検索広告について何の発表も行っておらず、詳細について触れようがないのであるが、今年の大きなトピックの1つになるだろうことは間違いなかろう。

いずれかのタイミングで移行が行われるはずなので、同社のリスティング広告を利用している企業や関係する代理店等は最新情報の取得に注力していかなければいけない。

さて、前者のアルゴリズムサイト検索技術について見ていこう。2010年9月~11月は従来の Yahoo! Search Technology (以下、YST)の Yahoo! 検索と、Google に切り替えた Yahoo! 検索が平行稼働していたが、同年12月の段階で、Google 検索エンジンへの切り替えが完了した模様だ。この移行完了にあわせて、当社では YST 採用時と Google 採用時(以下、これを“新旧Yahoo! 検索”と表記する)において、オーガニック検索のランキングがどの程度変化するかを定量的に確認するための調査を行った。

本調査は Google 採用 Yahoo! 検索がかなりのユーザに浸透していた、11月中旬に実施した。当時は、まだ完全移行していなかったため、同一時点における YST と Google の検索順位を計測することができたためだ。この間に、Wikipedia で書き込み回数が多い「話題のキーワード」や、良く検索されるワードと地名を掛け合わせた「地名掛け合わせ」、Yahoo! 検索で検索回数が多い「一般キーワード」などのキーワードリスト(総計 約1,2000)を使って、メディア特性(Blog)やドメイン(.co.jp)、特定サイト(youtube.comなど)といったサイトの検索順位の計測を行った。

筆者の所属する SEM 総合研究所では、「影響が大きなセグメントがいくつか出てくるだろう」という仮説に基づいて調査を実施したが、新旧Yahoo! 検索のランキングの差分をみると、おおむねプラスマイナス2ポイント前後の変化にとどまっている。つまり全体的にみると、本調査では「移行後の影響は軽微」という結論となった。

ただし、本調査はオーガニック検索の中でも「ウェブ検索」に焦点を当てており、地図や動画、ニュースなど、検索結果にブレンドされる各種プロパティやコンテンツは除外している。さらに、Yahoo! 検索は Google と違い、ロケーションやパーソナライゼーションによるランキング変更の影響を受けないといった事情もある。さらに本調査で用いたキーワードは、(専門的になるため解説は省かせて頂くが)「YSTのパフォーマンスが良い」傾向が出るキーワードを選択しているため、差はほとんど出なかったともいえる。

平均で出してしまうとこの通り、影響はほとんどないのだが、個別にみると事情は異なる。たとえば、従来の Yahoo! 検索で順位を上げるために、あまりに偏りがある外部リンク施策を実施していたサイト ―つまりGoogleでは検索順位が芳しくなかったサイト― は Yahoo! 検索からのトラフィックは減少してしまっている。

また、テクニカルな理由により Yahoo! 検索でのランキングが慢性的に低い傾向にあったサイトは、今回の移行により大幅に(Yahoo! 検索からの)トラフィックが増加しているケースもある。(ちなみに筆者が運営していたサイトは後者のケースで、Google 移行後はトラフィックが300%増加している)

また、検索結果の構成要素のひとつに過ぎない「Web 検索の結果」という単位の比較ではなく、検索のサービスレベルで比較した時、Yahoo! 検索と Google は大きく異なる検索結果、異なる検索体験を提供しているという点を改めて理解しておきたい。

本コラムをお読みの方の多くは実務で検索マーケティングに携わっている方が比較的多いと思われるので、心配ないと思うが、両社提携について市場独占などの観点から論じられることも多く、そういう場合には根本的な勘違いや事実誤認をしていることもあるので、もしきちんと理解していない方がいれば、次に提示する例などを用いて検索結果を確かめてみてほしい。

たとえば「AKB48」や「卒業式」などと検索した時に、Google と、その技術を採用する Yahoo! 検索、goo、BIGLOBE 検索を比較してみてほしい。Web 検索結果をベースとしながらも、各社それぞれ「味付け」をすることにより、印象や使い勝手は随分と違うはずだ。とりわけ Yahoo! JAPAN はポータルサイトとして歩んできたからこそ、検索サービスにおいて他社と差別化・優位性を発揮できる、飲食や映画、地図、ショッピングなどの各プロパティのコンテンツを複合表示するため、キーワードによっては画面が大きく異なるし、ウェブ検索の掲載位置(=順位ではなく、位置に着目してほしい)は変わることがある。 さらに、Google はリアルタイム検索やパーソナライゼーション、検索位置情報などの違いを検索ランキングに反映させるため、純粋な Web 検索の順位に着目しても他検索サイトとは異なる情報を表示することもある。

一足先に Bing を採用した米国 Yahoo! は、独自の検索体験を築き上げるためにローカルやエンタテイメント領域で(Bing にはない)新しい検索技術を投入し、独自のサービス構築に動いている。今後、日本の Yahoo! JAPAN も同様の展開をして Google 採用ながら、サービスレベルで両社が競合・成長していくような歩みを示していくと予想されるため、次の動きにも注目したい。

ここで話をまとめておこう。

第一に、Google に切り替わって1か月が経過したことで、切り替え前後(2010年9~10月と、2010年12月の数値をみると、検索技術による差が明確に出るだろう)を比較することでトラフィックの影響がわかるはずだ。もし大幅にトラフィックが下落しているのであれば、2011年の目標の1つは、その対策・改善が大きなテーマとなるだろう。Yahoo! JAPAN は日本最大のポータルサイトであり、もっとも検索シェアの高いサービスであるから、ここは無視ができない。

次回以降で詳細について述べるが、Google は「サイトのアーキテクチャ」「コンテンツ管理運用」「自然リンク」の3つは、"王道"(小手先のテクニックではなく、純粋に ユーザにとって良い、使いやすい、価値がある、という意味)が求められる。Google で順位が著しく悪いというサイトは、いずれかのひとつが大きく欠けているケースが多いので、そこから手をつけていくといいだろう。

改めて述べておくが、Google で中長期的に安定的に検索トラフィックを得たいのであれば、その場しのぎの小手先のテクニックでは上手くいかないということを肝に銘じてほしい。一時的な小遣い稼ぎで行うサイト運営であれば問題はないだろうが、企業でそうはいかないだろう。

第二に、サイトで展開している自身のビジネスと、Google/Yahoo! 検索のブレンド検索の仕組みや内容をよく理解したうえで、自分のサイトはどこに露出すべきかをきちんと認識すること、そして、そのターゲットが「ショッピング」や「動画」といった枠であれば、Google と Yahoo! JAPAN それぞれにおいて何をすべきかを把握して、検討を行うことだ。

第三に、近年一部の企業が取り組んでいる、"コンテンツミル"(低品質なコンテンツを大量生成・公開していくサイト)を使ったアプローチも、今後、Googleはアルゴリズムを改良して徐々に評価しなくなっていくであろう。日本の状況を見ると、過去のコンテンツのリライトや、RSSとTwitter、何らかのデータベース(都道府県や人物名データベースなど)と接続するAPIを組み合わせて大量に役に立たないコンテンツを生成している企業は業種によって少なからず存在するのだが、この手の単純なものはすでに一部通用しなくなっている。あざとい手法を駆使することで有効ではあるかもしれないが、そんな何の役に立たないコンテンツに投資するくらいなら、もっとオンラインユーザの注目や興味・関心を集めるキャンペーンの企画を考えてみた方が遙かに有効だということに気がついてほしい。

執筆:株式会社アイレップ 取締役 SEM総合研究所 所長 渡辺隆広

ページTOPへ戻る

ページTOPへ戻る