2011年 サーチマーケティング展望 [2] ソーシャルシグナルはSEO業界にどんな変化をもたらすか?

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2011年01月31日 

検索エンジンのアルゴリズムサイト検索技術は、インターネットに広がる膨大な情報の中から、ユーザが送信した検索クエリに合致する、関連性が高い情報を瞬時に拾い出し、合理的に探索しやすい形式でリストアップする役割を担う。このアルゴリズムは、現状のウェブの世界を分析して、何らかの意味・評価・重要度の判断に活用できるシグナル(サイン)を拾い出し、関連性を判断している。たとえば、その代表的なシグナルは「リンク」であり、10年以上前にGoogleがこの検索の世界に持ち込んだ、PageRankというテクノロジーは、そのシグナルの重要性を十分に生かした代表的な商用検索エンジンといえる。

検索エンジンは、ウェブの変化にあわせて、その時々において最も優れた検索結果が表示できるように、拾い上げるべきシグナルやその取扱い方法を変化させてきている。たとえば、1990年代後半と2005年当時のウェブを比較してみれば、一般ユーザが手軽に情報発信できるブログ、ユーザ参加型ウェブ、UGC(User Generated Content)、RSSの登場などにより、リンクグラフやコンテンツなど、ウェブの世界が大きく変化していることは想像に難くないだろう。同様に2005年と今日を比較すれば、Facebook や Twitter の興隆などが挙げられる。また、最近話題となる、デマンドメディアが作り出す、日々大量に生み出されるコンテンツの誕生も、アルゴリズムに変更を加えなければいけない契機となろう。

少し前置きが長くなってしまったが、こうした検索技術の背景や歩みを踏まえた上で今年(そして直近の未来)の展望を考えた時、人間の評価をシグナルとして取り出すこと、「ソーシャルシグナル」(Social Signal)という概念の認識が重要となってくる。

ソーシャルシグナルとは、たとえばFacebookの「いいね(LIKE)」や、Twitterの言及(ツイート)、RT(リツイート)などを指す。広い概念ではクチコミレビューのスコアやコンテンツを含む場合もある。

従来の検索エンジンは、ランキング決定において主にウェブサイトが発するリンク、いわばサイト運営者の意見・評価に重点を置いてきた。検索サービスを利用している検索利用者の評価というのは、ここ(ランキングアルゴリズム)に含まれることはなかった。

しかし、TwitterやFacebookといったサービスの登場により、ウェブの世界に、いまユーザが興味・関心を示している事柄、交友関係にあるユーザ群が気に入っている事柄がリアルタイムにウェブ上で可視化されるようになってきた。また、オンラインユーザの経験・体験を記したページがブログやレビューサイトなどを中心に多数生まれてきた。そして、検索技術の進歩により、こうしたウェブを解析して、検索の精度を高められる可能性も見えてきた。だから今、GoogleやBing、そして数多くの新興企業がこうした新しいシグナルに着目した、検索サービスの開発や改良に取り組んできている。

たとえばMicrosoftはFacebookとの排他的取り組みの中で、BingとFacebookを連携させ、自然検索結果の中に友人が「いいね」と推したページが表示される機能を追加した。また、GoogleもMicrosoftも、各社の検索エンジンにおいて Twitter アカウントのオーソリティを計算して(Googleは"Author authority"(オーサー・オーソリティ)、Bingは"Social authority"(ソーシャル・オーソリティ)、そのアカウント(ユーザ)の発言内で言及されたページの重要度判定を行うようになっている。

Googleはまた、ユーザレビューのコンテンツそれ自体やそれを投稿したユーザ(アカウント)を分析して、それをランキングに反映する試みも行うようになってきているといわれる。たとえば日本ではあまり話題となっていないが、ローカルSEO(GoogleマップやGoogleプレイスにおける最適化を指す)においてはユーザレビューがランキング決定要因の1つとして挙げられている。

検索エンジンは、究極的には「人が見て"いい"と判断したページを、同じ程度に"いい"と判断できる」ことがゴールだ。従って、ページやサイトの重要度や信頼度の判断に、ユーザの評価を取り入れることは必然の流れであるし、今後もさらに強化されていくことであろう。ただし、ランキングアルゴリズムにおいて、こうしたソーシャルシグナルが従来のシグナル(ウェブやリンク)に置き換わるということは決してない。(少なくとも当面は)ページの関連性の判断は両者を組み合わせた方がベターだからだ。

ここで検索マーケティングに取り組んでいる人たちが十分に理解しておくべきことは、こうしたソーシャルな要素が増えるに従って、SEOはその場しのぎの、小手先のテクニックで検索順位を上昇させることはますます困難になっていくということだ。同時に(たとえば企業担当者なら)"実体"が伴う - 顧客に何らかの価値を提供しているなど - 企業としてあるべき姿で継続的に活動することで、相応に評価されるようになるということだ。言い換えれば、対象とするユーザに"良い行い"を継続することがランキングの評価にもつながるという意味で、良いトレンドともいえよう。

実際、GoogleもMicrosoftも、単純にbotを用いてフォロワー数を増やしたり機械的な発言を定期的に行っているアカウントの言及は評価していない。検索エンジンは、テクニカルに"価値がありそうに"振る舞っているサイトを評価したいのではない、先述した通り、人間が良いと思うサイトを機械的に良いと判定したいのだ。

今年の検索マーケティング業界の展望として、欧米でも「従来のリンク構築手法は衰退する」といった意見を挙げる専門家は少なくない。これは検索エンジンのアルゴリズムが進化して、検索技術を欺くスパム的なテクニックは通用しなくなっていること、単純にリンクを掲載していくのではなく、Earned Linksを増やすための仕組みが要求される時代になっていることと、本稿で触れてきた、活動を通じて個人・企業のオンラインレピュテーションを構築していくことが求められるソーシャルシグナルという新しい概念が入ってきたことが背景にある。

SEOに取り組みたい企業からすれば、短期間での成果を求めたい気持ちは十分にわかるが、しかしSEOは広告ではない。また、SEOは、たとえて言うなら短距離走のトレーニングではなく、長距離走のトレーニングが求められる。1つ1つの小さな積み重ねの上で成立する手法であることを改めて学んでほしい。

(執筆:株式会社アイレップ 取締役CSO / SEM総合研究所 所長 渡辺隆広)

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