「雑誌編集者」視点で考えるコンテンツ戦略~SEO とコンテンツマーケティング(改訂版)

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2013年06月25日 

● 的外れなパンダアップデート対応

Google によるコンテンツ品質評価の強化、通称「パンダ・アップデート」と呼ばれる検索アルゴリズムの更新を受けて、検索エンジンからの集客を重視する企業の中にも本腰を入れて対応に乗り出したところも増えてきた。つまり、サイト内のコンテンツを強化しようという動きだ。

Google としては、検索結果にできるだけ高品質な――訪問者にとって役立つ、有益な情報を提供できる――ウェブページを提示できるよう目指す一方、内容が薄く、役に立たないコンテンツは排除していくことで検索サービス全体の品質を高めたいという考えがある。つまり、こうしたGoogleの検索理念を実現するために開発されたアルゴリズムに“適応”したいのであれば、大原則として提供されるべきコンテンツは、少なくとも「価値あるもの」でなければいけないのは言うまでもない。

ところが実際に“パンダアップデートに対応してコンテンツを強化しました”という企業のサイトを見てみると、首をかしげたくなるような事例が少なくない。そこで今回は、改めて今日の検索マーケティングのトレンドにおける「コンテンツ」の考え方について、前編と後編に分けて解説をしたい。

なお、一般的なコンテンツ戦略やコンテンツマーケティングの話では話題が広がりすぎてしまうので、本稿では検索マーケティング担当者が理解・実行すべきコンテンツの話に限定して話を進めさせていただく。

● 「今日食べたランチ」を誰が知りたいのか?

たとえば、ある企業はパンダアップデートが日本にも適応された後、自社の Webサイトの検索エンジントラフィックを維持するためにコンテンツの強化に取り組み始めた。外部の SEO 会社からのアドバイスを受けて、サイト内に、新たに製品・サービス別に複数のブログを設け、担当する各部署が数日に1回のペースで記事を更新していくような取り組みを行った。

この取り組み事態は素晴らしい。しかし問題はその内容だった。過去3か月のそれぞれの新たに公開された記事の内容を分類すると、全体の80%が次の内容で占められていた。

・天気 ・ブログ担当者が今日食べたランチの話 ・近くのイベント情報(お祭りとか、紅葉がきれいですね、etc) ・社員向けの行事の話

つまり全体の80%が、顧客には全く持って関係なければ、誰のための情報なのかよくわからないものが発信されている。SEO 会社からそうアドバイスされて行っているそうである。

もちろん、上記のようなトピックの全てが無意味であるとは言わない。きちんと訪問者のことを考慮して、その会社の商品やサービスの背景や狙い、その商品にかけた担当者の思いや人となりを伝えることは、その会社や商材の親しみやすさや共感を得るきっかけになるかも知れない。しかし上記に挙げた事例では、そういった「読者がいる」という視点が全く欠けて、とりあえず日本語文字列並べてみました的な、つまり上司から指示されたのでやってみましたというのがひしひしと伝わってくるような内容だった。

個人が自分のブログで日々の出来事を書き連ねるのはその人の自由だ。しかし、会社の公式サイトにおいて、それに言及する記事がほとんどなく、大多数にとってどうでもいい記事が出来上がっていくことに、意味があるのだろうか。そもそも、「パンダアップデート」に対する回答にすらなっていない。

実は、SEO のためのコンテンツ強化策という名目で、内容の薄い記事が増えるようになったサイトというのは、いくつもある。先ほど触れたように、更新のための更新を行っている事例は散見される。このようなアドバイスをする外部のSEO会社にも問題があるが、それを真に受けて取り入れる企業にも問題がないわけではない。

こうした的外れな対応を行ってしまう原因は、「アルゴリズム的に評価されればいい」という、技術的アプローチのみでの解決策を図るという旧態依然とした発想で解を求めるというその姿勢にあるだろう。本来の解決策は、自社サイトの潜在顧客を良く見て、彼らにとって有益なコンテンツを継続的に提供すること、つまりユーザーを見て考えるという、極めて当たり前なところから考えなければならない。

パンダアップデート以後に、欧米でコンテンツマーケティングやコンテンツ戦略といったトピックスが話題になっているのは、ユーザーに役立つ、皆が紹介をしたくなるコンテンツ作りとはどうすべきかに皆が関心を集めるようになったことを示している。だから、こうした言葉がバズワード的に注目を集めているわけだが、それを理解せず、従来通り外部リンク中心で SEO を進めて、何か適当にコンテンツを積み上げていっても、解決にはならない。

● 価値あるコンテンツにはお金がかかるのか?

ユーザーの役に立つコンテンツ、皆がリンクしたりシェアしたくなるようなコンテンツを継続的に作ってくださいというと、多くの担当者は「お金がない」「何を書いたらいいかわからない」「書くスタッフがいない」「ネタがない」などの、“できない理由”を並べてくる。ただ実際のところ、今日の SEO の世界で求められるコンテンツ作りに必要なのはお金ではなく、着眼点であり、生活者視点である。

要は、ある商品やサービスを購入してもらいたい場合、それを購入する顧客が最終的な意思決定をするまでの過程で必ず質問・相談してくるような事柄をコンテンツにすれば良いだけである。求められるのは「顧客が知りたいことは何?」の一点なのだから、難易度が高い仕事では決してない。それを購入する時に、“実はみんなが知りたがっていること”を求める発想や視点が必要だ。

たとえば、筆者は過去に何度か引越をした時に、カーテンを買い替えたことがある。その時にいつもわからなくて検索する事柄が「カーテンの測り方」や「レールの種類」だ。カーテンを購入する前に、必要なカーテンの数や長さを決定しなければならないが、その必要数の数え方は窓の位置やサイズでも変わるし、同様に正しいサイズを購入するためにどこからどこまで測るかを確認する必要がある。だから、そのための知識を得るために、検索をして情報を得なければならない。幸いカーテンの場合は、どこのカーテン販売店もそういったコンテンツが用意されている(たぶん質問が多いのだろう)。

こんな具合に、他の商品やサービスでも、そういった「みんなが知りたいポイント」は大抵存在するはずだ。男性向けのビジネスバッグであれば、それがA4サイズのノートPCが余裕で入るのかどうかといった機能的なことを知りたい人もいるだろうし、女性の洋服や靴のような視覚的な情報が頼りになるような場合でも、その利用者のクチコミ情報など掲載することで意思決定が促されるコンテンツがある。こうした購入前に"知りたいコトガラ"をどう探し出し、拾い上げて、問題解決に導くコンテンツとして提供するかが重要となる。ここに必要なのは、追加の予算ではない。

※ 現実には、その専任者を新たに雇う必要がある、あるいは、コンテンツ編集は別の部署が担当しているから他部署と連携して横断的に対応しなければならないなどの事情はあり、そのための追加コストが発生するという言い分があるのは理解できる。その話題はまた別の機会で述べたいが、ここでは『現在そして今後のSEOにおいて、従来の広告・ウェブ担当者とコンテンツ編集担当が垣根を取り払って協調してサイト運営に取り組んでいかなければいけない方向になってきている』というトレンドだけお伝えしておきたい。こうした変化にあわせてSEOに取り組むための組織改編は必要だろう。

● 「雑誌の編集者」の立場で考える

コンテンツ作りに必要な事柄は本コラムの後編で述べていくが、まず大原則を1つ提示しよう。コンテンツ作りは「雑誌の編集者」だと思って考えてみると良い。

つまり、商品やサービスの利用を検討している顧客に渡す小冊子やパンフレットを作成すると思って、そこに何のコンテンツを掲載すべきか、という発想で考えるということだ。そうすれば、先に紹介した「ランチの写真」や「外部の人間にとってはどうでもいい社内行事の話」は入れてはいけないことは明白だろう。

雑誌を手に取った顧客が、その商品やサービスの魅力にひかれる、比較検討材料を探している人が、これが良さそうだなと判断できること、ちょっと不明だったことがハッキリとわかるような情報、つまり顧客の背中をちょっと押してあげられるようなコンテンツをどう継続的に発信していくのかという発想で考えるのが、肝要である。

● 顧客が知りたいことを探す

では次に、具体的な顧客のニーズの探し方について解説をしたい。よく相談されるWeb担当者の方から「何を書いたらいいのか」と質問を受けるのであるが、これは外部の人間にとってピンポイントで回答するのは容易ではない。当然ながら正解はないわけで、商品やサービスの性質や特性によって、書くべき内容は異なるからだ。本稿では、目の付けどころを学ぶためのヒントとして、いくつか定番の方法論と、私のやり方もあわせて紹介したい。

● 専門書や雑誌の「目次」を見る(旬な商品の場合)

もし皆さんが取り扱っている商品やサービスが旬なもの、テレビ番組の特集などで紹介・言及されるような商材であるならば、とりあえず近所のコンビニや書店などに足を運んで、雑誌コーナーに並んでいる雑誌に一通り目を通して、該当商材を扱っている記事を探す、という方法がある。一通りの雑誌を手にとって、その目次を見て、商材に関連する記事があるかどうかを探して、各誌がどんな切り口で言及しているのかを把握しよう。大抵の雑誌は、プロの編集者が時間をかけて記事を書いているはずで、読者が知りたそうな物事にフォーカスして書いていることが多いので、複数の雑誌が共通して言及している話があれば、それは顧客が知りたい事柄である可能性がある。

また、この方法は、実際に当該商品に興味関心のあるユーザーが検索する時に利用するであろうキーワード(やその組み合わせ)、それぞれのインテントをあらかじめ予想することも可能である。なぜなら、人が検索する時に入力する言葉(クエリ)は、過去に経験・接触した言語によって規定される。たとえば、仮にある新商品 A が登場した時に、その製造元メーカーや販売代理店が YYY という名称を用いていても、メディアがそれを紹介する時に ZZZ という言葉を多用していると、生活者はそれを検索する時に ZZZ という言葉を使う傾向が強いことがわかっている(2008~2010年 SEM 総合研究所調べ)。

また、ある商材が口コミで拡散してそれが検索にも反映された場合、それぞれの検索利用者が検索時に使用する言葉は、その話をした友だちや知人が会話時に使用した言葉によって決定される(同調べ)。従って、あるメディアによって紹介されたことで検索数が増えている時に、その検索を誘発したメディアを特定できれば、検索の背景にあるインテント(意図)もより精緻に特定できるようになるため、それに適合したクリエイティブやランディングページを用意すれば成果を高めることも可能である。

すこし話が脱線してしまったので話を戻すと、雑誌や書籍でその話題について他の人がどんな風に編集しているかを知ることは、自分が何を書くべきかを考える上での参考になる、ということである。

● 図書館で関連する書籍を探す(一般)

先の話と共通するが、図書館で関連商材のことに言及している書籍、雑誌や新聞記事を探すのも良い。その領域の専門家が書いた書籍であれば、きっと普通の人は知らないけれど、それに触れた読者は価値があると感じるような事柄に言及していることもあろう。「よくわかる」系や「上手に○○○する」系の書籍があれば、あまり的外れな(読者が無関心な)項目立てはしないので、どこがコンテンツとして面白いのかある程度は絞り込めるはずだ。

上記2つの方法はいずれも「他の人のコンテンツを真似ろ」という話ではなく、言及しているポイントから「読者が知りたがっているであろうこと」を考える上で、参考にするための方法であるので注意してほしい。

また、「上記の方法は、Google でキーワード検索してサイトをピックアップするだけでいいのでは?」と思われる方もいるかもしれないが、書籍や雑誌という体裁で発行される以上は無駄な情報は排除されている(そうじゃないケースもあるが)ことが多いので、今回の「コンテンツの切り口のヒントを探る」という目的であれば、実は Web で検索するより書籍と雑誌で絞り込んだ方が短時間で済む。

繰り返しとなってしますが、検索者が利用する検索キーワードは、(専門家ではなく)一般の人がよく触れる媒体で利用される言葉によって決定づけられることからも、書籍や雑誌で探していく方が効率的である。ただ、もともとウェブを起源として発生した興味関心で、まだ新聞や雑誌で取り上げられていないフェーズ(つまり純粋にウェブで口コミが拡散している段階)ではその限りではない。

● Web 解析で、リファラ―数の少ないキーワード情報を見る

Web 解析のレポート画面で、検索時に利用したキーワード(参照キーワード)情報が閲覧できる。このレポートの、参照数が少ない方のキーワードは、検索者が知りたいことを考えるヒントになる場合がある(※最近は Google 検索の SSL 暗号化により参照できないキーワード数が増加してしまったので、以前ほど活用できる方法ではないことを予めお断りしておく)。

なぜ流入数が少ない方のキーワードを見るかというと、少ない方のキーワードは3~7語程度の多数のキーワードの組み合わせで訪問しているケースがあり、そうした組み合わせキーワードは意図が想像しやすいことと、その意図は得てして皆さんが意思決定をする時に悩んでいる事柄かもしれないことがあるからだ。たとえば、6語で検索してくるユーザーは、きっとどうしてもある事柄について知りたかったのだろう。でも、その数を入れるということは、普通のキーワードでは探しきれなかったコンテンツかもしれない(検索リテラシが非常に高くてピンポイントで情報探索しているケースもある)。だから、そうしたキーワードから検索意図を想定し、それに該当するコンテンツが競合他社にないのであれば、それを用意する価値はあるかもしれない。

最近は Google の検索暗号化により参照キーワード情報は得難くなっているが、サイト内検索を導入している場合はその情報が役立つはずだ。

● Q&A サイトを見る (Yahoo! 知恵袋、OKWave、はてな、など)

これは定番中の定番の方法で、もし知らない方がいるのであれば是非参考にしていただきたい。Yahoo! 知恵袋や OKWave(MSN 相談箱や教えて! goo)などには、ユーザーからの質問と回答が詰まっている。ここで、自社が扱う商材のキーワードで検索して、皆さんが何を質問しているのかを探していけば、自分が何のコンテンツを自社サイトで用意しておくべきかわかるはずだ。ここで質問している人は、いくつかの EC サイトを回ったけれどよくわからなくて質問をしたに違いないのだから、それは EC サイト内で解決できるように回答となるコンテンツを提示してあげることは、Web サイトとして果たすべき役割の1つだろう。

● 商材に関連するフォーラム(掲示板)を見る

その商材について集う掲示板やフォーラムなどを覗くというのも1つの方法だ。中には濃い議論をしているような場所もあるが、こうした場で目を通すと、皆さんが知りたがっているであろうヒントはつかめるはずだ。特に、世間的にはマイナーな存在でも、その商材においては多くの人が集う、活発に情報交換が行われている掲示板は、コンテンツのヒントに大いに役立つだろう。これは商材によってケースバイケースのため、自身が取り扱う商材の情報交換が積極的に行われている掲示板などを探すことをおすすめする。

● 検索クエリ=質問に対して回答=コンテンツを提示できる Web サイトを

以上、コンテンツ作りを始めるための、ヒントを得るための方法論について紹介してきた。ある程度の商材は、上記の方法のいずれかの組み合わせによって、おおよそ「自社に足りないコンテンツ」は探せるのではないだろうか。相談者の話をよくよく聞いていて私が感じることは、皆さんがその業界で働いており、その商品について詳しすぎるが故に、本来知りたい事柄が、「当たり前の情報」と思い込んでしまっているためにコンテンツの切り口がわからない人が多いように思う。たとえば自分が全く興味関心のない商品を今から購入して来いと言われてあれこれ調べ始めたら、絶対にわからないことの1つや2つは出てくるはずであり、それは皆さん自身が扱っている商品についても同じである。業界の人間だから身近で当たり前だけれど、きっと外から見ればわからないことだらけである。だから、意思決定の時に絶対に必要な情報だけれど、わからないこと」は何なのかをよく探っていけばよいのだ。

検索エンジンというのは、ユーザーが投げた質問(検索クエリ)に対して、回答を返すサービスでもある。サイト運営者は、その質問に対する適切な回答を用意して、検索エンジンを通じてその質問者に渡す意識で取り組んでいけば、適切な回答を得られる検索者も、来訪を促せるサイト運営者も、そして検索サービス事業者も皆がハッピーとなる。SEO というのは検索エンジンと戯れるゲームではなくて、世の中の検索利用者、サイト運営者、検索エンジン会社それぞれが幸せになるには、サイト運営者として何をすることが良いのか、という姿勢で考えてもらえれば、このパンダアップデートの話に限らず、上手く検索エンジンとつきあっていけるはずだ。

[終わり]

株式会社アイレップ 取締役 SEM 総合研究所所長 渡辺隆広

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